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Linux技術者としてのスキルを示すことのできる資格としてLPI認定資格(LPIC)があります。グローバルな資格として認められており、ベンダーフリーなオープンソースに関しての認定資格です。

スキルを第三者の立場から証明してくれる資格ですので、エンジニアのキャリア形成や転職といったシーンで役立てることができます。本記事ではLPICとはどの様な試験なのか、受験料、勉強方法、試験日などについて解説いたします。

LPICとは?

LPICとは、Linux Professional Institute(LPI)という非営利組織の運営するLinux技術者のスキル認定資格(Certification)です。LPIはカナダに本拠地を持ち、世界の180ヵ国以上で認定試験を実施しています。

日本では2000年頃から試験が行われており、2018年よりLPI日本支部によって試験が提供されています。

参考:LPI「LPIの認定資格」

LPICの特徴

LPICの特徴として、以下が挙げられます。

  • ・Linux技術者のスキルを認定する資格
  • ・Linuxをはじめとしたオープンソースのエンジニアをサポート
  • ・ベンダーフリー
  • ・グローバル基準
  • ・世界中で200,000を超える認証保有者が存在
  • ・Linuxの開発に貢献するグローバル企業のスポンサーを持っているため、試験にトレンドが反映されやすい
  • ・CBT方式(コンピュータを使った試験)により、好きな時間、好きな場所のテストセンターでいつでも受験可能

※環境が整っていれば自宅で受験も可能

LPICの試験分類と試験範囲、難易度、合格に必要なスキルの目安

LPICは大きくレベル順にLPIC-1、LPIC-2、LPIC-3に分けられています。それぞれのレベルに複数種類の試験があり、LPIC-1、LPIC-2の認定には全ての試験に合格することが必要となります。

認定の有効期間は5年間です。また、前のレベルの認定を持つことが、次のレベルの受験への前提条件となっています。LPICより基礎的な資格としてLinux Essentialsという試験も存在します。

認定資格 試験名 受験前提となる資格 認定期間 試験範囲 目安となるスキルレベル
Linux Essentials なし 生涯有効 Linuxの基礎、コマンドライン、OS、セキュリティ Linuxの基礎レベル
LPIC-1 101 なし 5年 システムアーキテクチャ、パッケージ管理、コマンド、ファイルシステム Linux管理者レベル
102 なし 5年 シェルとスクリプト、UI、管理タスク、システムサービス、ネットワーク、セキュリティ Linux管理者レベル
LPIC-2 201 LPIC-1 5年 キャパシティプランニング、カーネル、起動、デバイス、ネットワーク構成、メンテナンス Linuxエンジニアレベル
202 LPIC-1 5年 DNS、Web、ファイル共有、メール、ネットワーク管理、システムセキュリティ Linuxエンジニアレベル

LPIC-3

300 LPIC-2 5年 Samba、AD、共有設定、ID管理、ファイル共有 Linuxスペシャリスト(混在環境)
303 LPIC-2 5年 暗号化、ホスト・ネットワークセキュリティ、アクセス制御 Linuxスペシャリスト(セキュリティ)
305 LPIC-2 5年 仮想環境、HAクラスタ管理、クラスタストレージ Linuxスペシャリスト(仮想化・高可用性)
306 LPIC-2 5年 HAクラスター管理、ストレージクラスター、分散ストレージ、単一ノードの高可用性 Linuxスペシャリスト(HAとストレージ)

※試験分類、試験範囲等については2025/05時点での情報となります。

LPICの勉強方法

LPICはProfessional向けの資格であり、合格するためには計画的な学習が必要です。その学習方法としてLPIがおすすめしている2つの方法を紹介します。

トレーニングパートナーを利用する

LPIではトレーニングパートナーの認定制度を設けており、受験に向けた学習をサポートするパートナーを下記のURLより探すことが可能です。

外部サイト:トレーニングパートナーを探す

テキストやWebサイトから学習する

LPICは独習により学習し、受験することも可能です。そのためのテキストやWebサイトが、様々なところから提供されており、LPIでもその一部を紹介しています。

学習リソースを探す

日本国内で人気のあるテキストとして挙げられるのが、翔泳社「Linux教科書」シリーズです。カバーの色から通称あずき本とも呼ばれており、解説、練習問題から環境構築までをカバーしてくれる一冊です。

参考:翔泳社「Linux教科書 LPICレベル1 Version5.0対応」

また学習サイトではPing-tが人気を集めています。LPICに関しても、無料の問題集が用意されており、繰り返しの学習が合格に繋がります。(有料コンテンツもあります)

参考:Ping-t

LPICレベル1でよく出る問題と対策

LPIC-1試験では、Linux環境における基本的な操作やシステム管理のスキルが問われます。選択問題と記述問題が混在しており、単なる暗記だけでなく実務に基づいた理解が必要です。

合格の近道は、問題集やテキストを活用し、頻出分野を繰り返し学習することです。選択肢のひっかけや似たコマンドの違いを見分けられるように、実際にLinuxを操作しながら学びましょう。

また、問題文が実務に即した形式で出されるため、机上の知識だけでなく「自分が操作するならどうするか」という視点を持って学ぶことが大切です。

ここでは、特に出題頻度の高い分野とその対策方法を紹介します。

シェル操作と基本コマンド

まず重要なのが、Linuxのコマンドライン操作に関する知識です。たとえばls、cp、mv、rm、grep、find、tarなどの基本的なコマンドのオプションを正しく使い分けられることが求められます。

また、リダイレクトやパイプの構文も頻出で、コマンドの出力をどう処理するかに関する理解も問われます。単なる構文暗記ではなく、実際に端末でコマンドを試しながら学習すると、記憶に残りやすくなります。

ファイルシステムとアクセス権の管理

ファイルの所有者、グループ、その他に対するアクセス権の管理(chmod、chown、umask)も頻繁に出題されます。

また、SUID、SGID、Sticky bitなどのオプションに関する理解も欠かせません。試験では「このユーザーがこの操作をした場合どうなるか」といった具体的なケースで問われるため、設定の効果をイメージできるようにしておきましょう。

パッケージ管理とシステム構成

Debian系(apt、dpkg)とRedHat系(yum、rpm)のパッケージ管理コマンドの違いもLPIC-1ではよく出題されます。

コマンドの使い分けや、リポジトリの設定、依存関係の処理などを正確に理解しておきましょう。また、システムの起動順序やランレベルの概念も重要で、systemctlを用いたサービス管理も押さえておく必要があります。

ネットワークの基礎知識

IPアドレス設定、ホスト名の解決、ルーティング、ポート番号など、ネットワークに関する基礎知識も出題されます。

ifconfigやipコマンドによるインターフェース確認、netstatなどによる接続状況の確認、pingやtracerouteなどの基本ツールの使い方を把握しておきましょう。

LPICを受験しよう

それでは、実際にLPICを受験する際の手続きを確認しておきましょう。

申し込み方法

①LPI ID取得

LPIのサイトにてLPI IDを取得します。日本語のガイダンスに従って入力を行い、IDを発行します。

外部サイト:LPI ID登録

②ピアソンVUEにてアカウント発行

試験の仕組みを提供しているピアソンVUEのアカウントも必要となります。ピアソンVUEを初めて利用する場合は、日本語のガイダンスに従ってアカウントを発行します。前記のLPI IDの入力が必須となります。

外部サイト:ピアソンVUE「ウェブアカウントを作成」

③バウチャーチケットの購入

受験のための電子チケット、バウチャーチケットを購入します。バウチャーチケット購入センターを利用すると割引を受けることが出来てお得です。

④試験申し込み

ピアソンVUEのサイトより、試験の申し込みを行います。環境が整っていれば、試験会場として自宅を選択することも可能です。

外部サイト:LPI::ピアソンVUE

⑤受験

試験申し込みを行った日時、会場にてLPICの試験を受験します。

試験日

受験日時は任意に指定することが可能です。ただし、不合格となった場合は再受験できない期間があるためご注意ください。

受験料

LPICの受験料は下記の通りです。なお、バウチャーチケット購入センターを利用すると10%OFFの価格で購入できるため、大変お得です。

LPIC受験料 価格はすべて円、税込み。

※1はバウチャーチケット購入センターを利用した場合の価格

認定資格 受験料 バウチャーチケット価格
Linux Essentials 13,000円 12,870円
LPIC-1 15,000円 14,850円
LPIC-2 18,000円 17,820円
LPIC-3 18,000円 17,820円

参考:LPICチケット購入フォーム

LPIC取得後のキャリアへの活かし方

LPICは、Linux技術者としての実力を客観的に証明できる認定資格です。ここでは、LPICを取得した後に期待できるキャリアについて紹介します。

システム運用・保守の現場で即戦力となる

LPICを取得することで、日常的なシステム運用・保守の現場で即戦力として活躍できるようになります。サーバーの起動・停止、サービスの再起動、ログの確認など、日々の定常業務において、Linuxのコマンド操作を正確に行えるため、トラブル対応のスピードと質が格段に向上します。たとえば、「Webサービスが停止した」という緊急時でも、サービスの状態を確認し、ログから原因を追跡し、的確な対処が可能になります。

ヘルプデスクやITサポート業務で専門性を発揮する

LPIC取得者は、ヘルプデスクやITサポート業務でも重宝されます。たとえば、開発者からの「コマンドでのファイル操作ができない」といった問い合わせに対しても、原因をコマンドで即時に調査し、解決策を提示できるなど、現場対応力が高まります。ユーザー権限の調整やネットワーク設定のトラブル対応など、技術的な信頼を得られる場面が増えるでしょう。

組織内での信頼獲得と専門分野でのポジション確立

LPIC保持者は、Linuxを中心としたシステムに対する高度な知識を持つ人材として、現場での信頼を得やすくなります。

障害対応や構成変更時に的確な判断を下せることから、インフラチームの中核を担う存在となり、プロジェクトリーダーや運用責任者といった役割を任されるケースも増えてきます。とくにLPIC-2以上を取得すると、複雑なネットワーク構成や高度なセキュリティ管理なども扱えるため、より専門性の高いポジションに就くことが期待されます。

グローバル企業やクラウド分野での競争力を高める

LPICは世界180ヵ国以上で認知されている国際的な資格であり、外資系企業においてもスキルの証明として高く評価されています。クラウド技術とLinuxの組み合わせは非常に相性が良く、クラウドエンジニアやDevOpsエンジニアを目指すうえでもLPICの知識は役立ちます。

まとめ

LPICはLinux技術者にとって、スキルを証明できる資格です。キャリアアップや転職時に役立てることができ、環境を整えれば自宅での受験も可能です。

初めての受験にあたっては、トレーニングパートナー、テキスト、Webサイトなどを有効活用して効率的な学習をしましょう。サーバー環境も合わせて用意できる選択肢を選びます。受験手続については、バウチャーチケットの購入が必要となります。バウチャーチケット購入センターを利用すると、受験料金の10%割引を受けることができるためお得です。