ITサービスマネジメントのベストプラクティスを体系化したフレームワークとして、多くの企業で活用されている「ITIL」。ITIL V4に続く次世代のフレームワークとして、2026年2月に「ITIL V5」が正式にリリースされました。「ITIL V5とはどのようなフレームワークなのか」「ITIL V4と何が違うのか」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ITIL V5の基本概要を整理したうえで、ITIL V4との違いや、ITIL V5の考え方がどのような人に役立つのかについて解説します。
ITIL V5とは?基本概要を解説
ITIL V5は、2026年2月に発表されたITILの最新バージョンです。従来のITサービスマネジメントの考え方を引き継ぎながら、デジタル化が進む現代のIT環境に対応するためにアップデートされています。
特に、クラウド環境の拡大やAI・自動化技術の普及、DXの進展を背景に、より実践的で柔軟なITサービス管理の指針を提供することを目的としています。
なお、ITIL V5は段階的に導入される予定であり、ITIL V4がすぐに廃止されるわけではありません。これまでのITIL V4の知識や資格も引き続き有効とされており、企業や個人は状況に応じて段階的に移行することが可能です。
参考:ITIL®の新バージョン「ITIL® (Version 5)」の発表について
ITIL V5が注目される背景
ITIL V5が注目されている背景には、ITを取り巻く環境の変化があります。

以下のような環境の変化に対応するため、ITサービスマネジメントのフレームワークであるITILも進化を続けています。
クラウドの普及
クラウドサービスの普及により、企業のIT環境はオンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド環境や、複数のクラウドを利用するマルチクラウド環境が一般的になっています。その結果、ITサービスの管理対象や運用方法も複雑化しています。
DevOpsやアジャイル開発の普及
従来のように開発と運用を分離するモデルから、開発と運用が連携しながら継続的に改善していくDevOps型の運用が広がっています。ITサービス管理も、こうしたスピード重視の開発スタイルに対応する必要があります。
AI・自動化技術の活用
AIOpsなどの技術を活用し、監視データの分析やインシデント対応を自動化する取り組みが進んでいます。IT運用では、AIや自動化を前提とした新しい管理の仕組みが求められています。
DXの推進
DXの進展により、IT部門には単にシステムを安定運用するだけでなく、ITサービスを通じてビジネス価値を創出する役割が求められるようになっています。
ITIL V4からITIL V5で何が変わったのか
ITIL V5では、ITIL V4の基本的な考え方を引き継ぎながら、フレームワークの対象範囲や管理モデルが拡張された点が特徴です。
| ITIL V4 | ITIL V3 | |
|---|---|---|
| フレームワークの目的 | ITサービスを効率よく管理する | デジタルサービス全体で価値を生み出す |
| 管理の対象 | ITサービスの提供・運用 | デジタルプロダクト、サービス、顧客体験まで含む価値管理 |
| 中心となる考え方 | サービスバリューシステム(SVS) | デジタルサービスのライフサイクル管理 |
| 技術との関係 | DevOpsやアジャイルとの連携 | AI・自動化・AIOpsなどの活用を前提とした運用 |
| 重視するポイント | サービスの安定運用・プロセス管理 | ビジネス価値・ユーザー体験の向上 |
| 想定される環境 | クラウド・DevOpsを取り入れたIT運用 | AI・DX・高度な自動化を前提としたIT環境 |
ITサービス管理から「デジタルプロダクト&サービス管理」へ
ITIL V4ではITサービスマネジメント(ITSM)が中心でしたが、ITIL V5では対象範囲が拡張され、デジタルプロダクトとサービスを一体的に管理する考え方が重視されています。
AI・自動化を前提としたフレームワーク
ITIL V5では、AIや自動化の活用が重要なテーマとして取り上げられています。運用分析や業務の自動化など、現代のIT運用で一般的になりつつある技術を前提とした管理モデルが強化されています。
デジタルサービスのライフサイクル管理
ITIL V5では、サービスの企画・設計・提供・運用・改善までを一体として管理するライフサイクル管理がより重視されています。
ユーザー体験の重視
ITIL V5では、サービス品質だけでなくユーザー体験(UX)も重要な指標とされています。利用者の体験を重視することで、ITサービスの価値向上を目指しています。
ITIL V5はどんな人に向いている?
ITIL V5は、ITサービスマネジメントの進化に対応したフレームワークとして、IT運用に関わるさまざまな立場の人に役立つ知識です。
ITサービス運用・ITインフラ担当者
サーバーやネットワークの運用、システム監視などを担当するエンジニアにとって、ITILは運用プロセスの改善やトラブル対応の標準化に役立ちます。
クラウド運用担当者
ハイブリッド環境やマルチクラウド環境では、ITサービス全体を統合的に管理する視点が重要になります。ITILは複数のサービスを横断的に管理する考え方を整理するのに役立ちます。
DevOps・SREエンジニア
DevOpsやSREでは継続的なサービス改善が重視されます。ITILを理解することで、インシデント管理やサービス品質管理を体系的に捉えることができます。
DX推進担当者やITマネージャー
IT部門にはビジネス価値を創出する役割が求められており、ITILはITサービスとビジネス価値を結び付けて管理するフレームワークとして役立ちます。
まとめ
ITIL V5は、ITIL V4をベースに進化した最新のITサービスマネジメントフレームワークです。クラウド、AI、自動化、DXといった現代のIT環境に対応するため、管理対象や考え方が拡張されています。
ITILの知識は、IT運用担当者だけでなく、クラウド運用担当者やDX推進担当者など、ITサービスを通じてビジネス価値を高めたい人にとって重要なものです。今後のITサービスマネジメントの動向を理解するうえでも、ITIL V5への理解を深めておくことが重要です。
