
ITILファンデーション(ITIL Foundation)はITサービスマネジメントにおける知識およびITILに関する理解度を問われる試験、資格です。
ITサービスの管理者および関連業務につくエンジニアが対象となっており、ITサービスマネジメントのスキルを第三者から証明することが可能です。ITサービス管理者、エンジニアのキャリア形成や転職といったシーンで役立つ資格といえます。
本記事ではITILファンデーションとはどのような試験なのか、受験料、勉強方法、試験日などについて解説します。
ITILファンデーションとは?
ITILはInformation Technology Infrastructure Libraryの略称で、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス(成功事例)をまとめた書籍群の名称です。
世界中に広く普及しており、ITサービス全体のデファクトスタンダードとなっています。この書籍をベースにしたスキル認定の試験制度もITILの名称が付きます。
ITILは英国商務省により出版されていましたが、現在では、認定元/試験運営はPeopleCert社によって行われています。
ITILファンデーションはITサービスマネジメントにおける知識およびITILに関する理解度を問われる試験、資格です。受験のための前提となる要件はありません。
ITILは4段階のレベルに分かれており、ファンデーションは一番下位の試験です。本試験の資格取得が上位のITIL資格の受験要件となっています。
2025年4月現在の最新版は、ITIL® 4 Foundationというバージョンです。2021/10現在、最新版はITIL® 4 Foundationというバージョンです。また、ITIL® (2011) Foundation exam(バージョン3)も試験提供が行われています。
詳細については、公式サイトをご覧下さい。
ITILファンデーションの特徴
ITILファンデーションの特徴として下記が挙げられます。
- ・ITサービスマネジメントに関する知識を認定する資格
- ・世界レベルで普及する業界のデファクトスタンダード
- ・ベンダーフリー
- ・有効期限なしで生涯利用可能
- ・エンジニア、ITサービス管理を業務とする場合のスキルアップに利用できる
- ・CBT方式(コンピュータを使った試験)により、好きな時間、好きな場所のテストセンターでいつでも受験可能
- ・ITIL関連資格のエントリレベルに位置しており、上位試験への受験資格となる
試験分類と試験範囲、難易度、合格に必要な学習時間の目安
ITILファンデーションについて、試験の分類、試験範囲、難易度、合格に向けた目安の時間をまとめました。
なお、参考とした資料は下記です。
参考:特定非営利活動法人スキル標準ユーザー協会「ITSSキャリアフレームワークと認定試験・資格の関係(ISV Map Ver11r2)」
参考:PeopleCert研修資格「ITIL®4ファンデーション」
試験資格・試験 | 試験範囲 | 難易度 | 目安となる学習時間 |
---|---|---|---|
ITIL Foundation V4 (ITIL® 4 Foundation) |
1.サービスマネジメントの主要概念 2.ITILの指導原則が組織とサービス管理をどのように結びつけるか 3.サービス管理の4つの原則 4.ITILサービスバリューシステムの目的と要素 5.サービスバリューチェーンの活動と相互接続 6.15の実践例から目的とキーを知る 7.7つのITILプラクティス |
エントリレベル (ITSSレベル1準拠) | 15-24時間程度 PeopleCert研修資格の研修時間に準拠 |
※試験分類、試験範囲等については2024年4月時点での情報となります。
ITILファンデーションの勉強方法
ITILファンデーションを受験するにあたり、ベーシックな勉強方法をご紹介します。
認定研修パートナーを利用した学習とテキスト、Webサイト、アプリなどを利用した独学の2つが一般的な勉強方法です。過去問の活用も合格のためのポイントとなります。
認定パートナーを利用する
ITILはPeopleCertにより運営されています。PeopleCertでは認定パートナーを設けており、この認定パートナーを利用することで公式な研修を受けることが可能です。認定パートナーの一覧は、下記のリンクを参照下さい。
テキストやWebサイトから学習する
ITILファンデーション受験に関して、書籍、Webサイト、アプリなどがあり、これらを利用した学習により合格を目指すことも可能です。
参考:ITIL® Foundation: ITIL 4 Edition
公式書籍です。PeopleCertの子会社であるAXELOSにより発行されています。日本語版、英語版などが存在するため、購入時にはご注意下さい。
参考:ITIL はじめの一歩 スッキリわかるITILの基本と業務改善のしくみ
ITILに関する一般書籍です。試験対策ではありませんが、ITIL学習の初歩に最適です。
参考:IT Service Management教科書 ITIL ファンデーション シラバス2011 (EXAMPRESS)
ITILファンデーションV3受験のための書籍です。表紙の色から黄色本とも呼ばれ、試験対策として人気が高いです。
参考:Ping-t
学習Webサイトです。ITILファンデーションV3向けの問題集「最強WEB問題集ITILファンデーション(2011)」が無料で利用可能です。
参考:CramMedia
「ITIL V4 Foundation Exam 資格問題集 - ITIL 問題集」として、ITIL4ファンデーション向けのオンライン問題集が販売されています。
ITILファンデーション試験でよく出る問題と対策
ITIL® 4 Foundation試験では、ITサービスマネジメントに関する基本的な概念や、用語の正確な使い分けが問われます。試験はすべて選択式で、40問中26問以上の正解で合格となるため、出題傾向を押さえた効率的な学習が重要です。 ここでは、特に出題頻度の高いテーマと、対策方法を紹介します。
サービスの基本概念
まず押さえておきたいのが、サービスに関する基本的な用語です。たとえば、「顧客」はサービスの要件を決定する人、「ユーザー」はそのサービスを実際に利用する人、といった役割の違いを正しく覚えておく必要があります。 定義を丸暗記するのではなく、業務シーンでの具体的な違いをイメージしながら理解を深めましょう。
サービスバリューシステム(SVS)
ITIL 4の中心的な概念である「サービスバリューシステム(SVS)」も、試験でよく取り上げられるテーマです。SVSは、いくつかの要素で構成されており、それぞれがどのように連携してサービス価値を創出しているのかを理解する必要があります。 学習の際には、SVS全体の構造図を活用して、各要素の役割と相互関係を視覚的に整理すると記憶に残りやすくなります。
サービスバリューチェーン
サービスバリューチェーンの活動について、それぞれの目的や連携が問われます。これらの活動がサービス提供のどの場面で登場するかを把握することが重要です。 バリューチェーンの流れを業務プロセスにあてはめて、実務での活用シーンをイメージしながら学習すると理解が深まります。
ITILの7つの原則
ITILの7つの指導原則は、選択肢の言い回しが似ているため、特に注意が必要です。「価値に注目する」「現状から始める」「フィードバックを元に反復的に進化する」など、原則の具体的な意味と実践的な使い方まで理解しておくことが、正解を選ぶカギになります。 各原則に含まれるキーワードや背景となる考え方を整理し、似た原則と混同しないように区別して覚えることがポイントです。
ITILファンデーションを受験しよう
実際にITILファンデーションを受験する際の流れを確認しておきましょう。V3はプロメトリック社かピアソンVUE社より、V4はプロメトリック社にて受験が可能です。
ここではプロメトリック社を利用した場合の手順を紹介します。
申し込み方法
1.プロメトリックID取得 プロメトリックのサイトにてプロメトリックIDを取得します。ガイダンスに従って入力を行い、IDを発行します。
2.バウチャーチケットの購入 受験のための電子チケット、バウチャーチケットを購入します。当サイトバウチャーチケット購入センターを利用すると割引を受けることができてお得です。
3.プロメトリックのログイン、ポリシー同意、試験予約 下記のサイトからログインして下さい。受験者の情報の確認、必要情報の入力を行い、試験の予約を行います。
試験予約の際には、バウチャーチケットの受験チケット情報を入力します。試験日時、試験会場もここから選択します。
外部サイト:プロメトリック「試験予約・確認・変更・キャンセル・Web領収証の確認」
4.受験 試験申し込みを行った日時、会場にてITILファンデーションの試験を受験します。
試験日
受験日時は任意に指定することが可能です。不合格となった場合にも、再受験に条件はありません。
受験料
ITILファンデーションの受験料は下記の通りです。なお、バウチャーチケット購入センターを利用すると約20%~27%OFFの価格で購入できるため、大変お得です。
ITILファンデーション受験料。価格はすべて円、税込み。 ※1はバウチャーチケット購入センターを利用した場合の価格
試験 | 試験の会社 | 受験料(通常) | バウチャーチケット価格 |
---|---|---|---|
ITIL®4 ファンデーション | プロメトリック社 | 67,793 | 54,230 ※ |
オンライン(自宅・オフィス等) | 76,385 ※ | 59,400 ※ |
※公式電子書籍付き
ITILファンデーション取得後に目指せる上位資格
ITILファンデーションは、ITIL認定資格の中で基礎的な位置づけにある試験ですが、取得後はより専門的かつ実践的なスキルを証明できる上位資格へとステップアップすることが可能です。 ITIL® 4では、以下のように段階的な資格体系が用意されています。
レベル | 認定の種類 | 概要 |
---|---|---|
基礎 | ITIL® 4 ファンデーション | ITサービスマネジメントの全体像を理解する。 |
Expert認定 |
ITIL®マネージング・プロフェッショナル(MP) ITIL®ストラテジック・リーダー(SL) ITIL®プラクティス・マネージャー(PM) |
特定領域に特化したより高度な知識とスキルが求められる。 |
The Master | ITIL® 4 マスター | ITIL全体の体系と実践経験を踏まえた高度な専門知識が必要。 |
以下では、ITILファンデーション取得後に目指すことができる3つの上級資格(Expert認定)の特徴を紹介します。
これらの資格は、それぞれ異なる専門領域に特化しており、自分のキャリアの方向性や現在の業務内容に応じて、最適なものを選ぶことが大切です。どの分野で活躍したいのかを明確にしたうえで、自身に合った上位資格を検討しましょう。
ITIL® マネージング・プロフェッショナル(MP)
ITIL® マネージング・プロフェッショナル(MP)は、ITサービスの設計から提供、運用、改善まで、実務に直結するスキルを体系的に学べる資格です。サービス現場での経験を活かしながらマネジメント力を強化したい方や、IT部門の中堅リーダー層におすすめです。
ITIL®ストラテジック・リーダー(SL)
ITIL® ストラテジック・リーダー(SL)は、ITとビジネスの戦略を統合的に考える力を身につけられる資格です。IT部門の管理職や、デジタル変革を推進する立場の方に特におすすめです。
ITIL®プラクティス・マネージャー(PM)
ITIL® プラクティス・マネージャー(PM)は、インシデント管理や変更管理など、特定の業務領域における専門性を深めることができる資格です。自身の業務内容に沿ってスキルアップしたい方や、特定分野の実務リーダーを目指す方に適しています。
ITILファンデーション取得後のキャリアへの活かし方
ITILファンデーションは、ITサービスマネジメントの基礎知識を体系的に学べるだけでなく、その取得を通じてキャリアの選択肢を広げることができます。
実務の理解を深め、主体的な業務改善に活かす
ITILファンデーションを取得することで、ITサービスマネジメントにおける基本的な概念や用語、業務プロセスへの理解が深まります。特に、システム運用・保守、ヘルプデスク、インフラエンジニア、ITサポートなどの業務に携わる方にとっては、日々の業務の背景や全体像を体系的に捉えることができるようになり、より主体的な業務改善や問題解決が可能になります。単なる作業者としてではなく、改善を提案・実行できる人材として一歩前に進むことができるでしょう。
組織内での信頼と役割の拡大につながる
企業において、ITILファンデーションの資格を持つ人材は、ITサービスの品質向上や、顧客・他部署との円滑な連携を担う「信頼される橋渡し役」として評価されることが増えています。その結果、チーム内でリーダー的なポジションを任されたり、重要なプロジェクトへの参画を求められるなど、キャリアアップや昇進のチャンスが広がります。
グローバルなキャリアに活用する
ITILファンデーションは、世界的に認知されているグローバルスタンダードの資格であり、外資系企業への就職や、国際的なITプロジェクトへの参画においても強みとなります。ITサービスマネジメントに関する共通言語を身につけていることは、国内外を問わず高く評価されるポイントであり、多様なチームや文化と連携する上でも大きな武器になります。将来的にグローバルなキャリアを見据えている方にもおすすめです。
このように、ITILファンデーションは単なる知識の証明にとどまらず、業務の価値を高め、自分自身の働き方を見直すきっかけとなる資格です。今後、上位資格の取得を視野に入れながら実務経験を積み、さらに専門性を高めていくことで、IT分野でのキャリアをより確かなものにしていくことができるでしょう。
まとめ
ITILはITサービスマネジメントの知識とスキルを示せる試験、認定資格制度で、エンジニアなどのキャリアアップや転職に役立ちます。
現在、ITILファンデーションはV4が提供中です。受験勉強は認定パートナーやテキスト、Webサイトを利用しましょう。
受験にはプロメトリック社またはピアソンVUE社のいずれかを利用。バウチャーチケットを購入して申し込みをしましょう。受験料は、バウチャーチケット購入センターを利用すると20~27%の割引を受けることができ、大変お得です。